第207回:突然の別れ(2004/07/05) | |
出会いがあれば別れもある、これ世の中の理。 その理を胸に日々過ごすのが人生であります。 先日、私も連れも友人達も大変贔屓にしていた中華料理屋が閉店しました。 私が東京に来てからの生活は常にこの中華料理屋と共にあったと言っても過言ではなく、 食事をするという面でも、私の人生という面でも、 この店を切り盛りするおじちゃんとおばちゃんには大変御世話になっていました。 今住んでいる町を離れない理由に「この中華料理屋があるから」というのがあったくらいです。 まず味は文句なし。 御世辞ではなく何を食べても美味い。 誰かが遊びに来た時は、まずここで食事すれば問題ありませんでした。 私はこの店の炒飯を超える炒飯は未だに食べたことありません。 それより何より、私を含めた常連さんが「心の拠り所」としていたほどの 素晴らしい人柄のおじちゃんとおばちゃんが大好きでした。 楽しいことも嬉しいことも辛いことも悲しいことも、 全て包み隠さず打ち明けられる、そんな存在でした。 バイト終わって帰る前にここで夜食を食べると疲れた身体も元気になりました。 閉店間際に顔を出しても嫌な顔ひとつせず迎え入れて頂きました。 そして閉店時間になっても追い出すこともせず、 おじちゃんの晩酌のビールを一緒に頂いて小一時間話し込んでしまったり 実家は静岡と言ったときは朝まで伊豆の話で盛り上がってしまったこともありました。 定休日前の閉店間際に食べに行くと余った御飯を包んで持たせてくれました。 (貧乏学生にはものすごく助かったんですよ) 店の中から外を歩く私の姿を確認するとニコニコしながら手を振って頂きました。 駅前とかで偶然出会うとこっちまで幸せになるような笑顔で挨拶して頂きました。 連れと喧嘩をしていてもおじちゃんとおばちゃんに諭されると何故か仲直りできました。 友達を連れて行くと友達の顔までしっかり覚えてくれました。 会社をクビ同然になった時には親身になって励まして頂きました。 そして再就職先が決まった時には一緒になって喜んで頂きました。 その後は私の仕事が順調かどうかいつも気に掛けて頂きました。 私の親父が倒れたことを伝えたら親父の容態を随分と気に掛けて頂きました。 ワンタン包みが神技級の凄さだったので「見たい」と御願いしたら 目の前で実演してもらった上、うちの連れに惜し気もなく技を教えて頂きました。 私と連れの行く末(?)について色々なアドバイスをして頂いたり 本当に暖かい目で見守ってくださいました。 そしてこれからも見守ってもらおうと思っていたのですが・・・。 まだまだここには書ききれないくらい、 いっぱい、本当にいっぱいの思い出を頂きました。 もう、料理を食べることも ハイサワーのお通しで出してくれるメンマを食べることも カウンター越しに会話を交わすことも ワンタンを高速で包む神技を見ることも もう叶わぬことなんですね・・・。 店を閉める理由は料理を作るおじちゃんが体力的に限界だからだそうです。 いずれは迎えなければならないことですから仕方ないのですが、 心底残念なのは閉店が突然だったこと。 本来は閉店一ヶ月前にアナウンスする予定だったそうなのですが、 タイミング悪く買い換えるしかない状態までクーラーが壊れてしまい、 流石に残り一ヶ月の為にクーラーを買うのは勿体無いということで 予定より一ヶ月早く閉店することになってしまいました。 同じ閉店でも事前に心の準備が出来ていれば いつもより味わって食べたり、今までに連れてきた友人を呼んだり、 話したいことや伝えたいことを上手くまとめて言えたりしたのですが。 心の準備が出来てない状態で閉店の報を受けたので、そのショックはかなり大きかったです。 クーラーあと一ヶ月頑張れよ、と。 私と同じ気持ちの人はかなりいるだろうと思います。 それでも、最後に挨拶できたので良かったです。 言いたいことを上手くまとめられませんでしたが 今まで御世話になったこと、その御礼を直接伝えることができましたから。 「お兄さんのことずっと忘れないからね」と言われ、泣きそうになりました。 私だってずっと忘れないです、この世にこんな素晴らしい店があったということを。 前まで私が住んでいたアパートは既に取り壊されてしまいましたし そう言えば秋葉原の『東洋』が閉店したのも今年だなあ。 どうやら今年は私の周りの「景色」が変わる年なんでしょうね。 恐らく私の住んでいる界隈では「伝説の店」として語り継がれるでしょう。 何はともあれ、珍竹のおじちゃんおばちゃんお疲れ様でした。 いつまでもお元気で。 <BGM> 燐月デモムービー [ Selen ] |