第403回:パパ(2010/05/03) | |
息子も1歳7ヶ月を過ぎ、まだまだ片言の単語ではありますが 意味を理解した上での言葉を喋れるようになってきました。 飯を食べてる時に「おいしい?」と聞くと「おいちぃー!」とか、 (おいしくない時はちゃんと首を横に振ります) 牛乳を飲みたくなると「ぎゅにゅ!」とか、 (お茶を渡すと首を横に振って拒否します) 風呂へ入っている時に頭を洗おうとすると「ヤダ!」とか、 簡単ですがちゃんと両親との意思疎通ができています。 あと、「パパ」「ママ」「ジージ(おじいちゃん)」「バーバ(おばあちゃん)」 保育園の「センセイ」などもちゃんと認識して言えるようになってます。 私は頑なに「ととさま」と呼ばせようとしていますが、 周りが「パパ」と呼んでしまうので難しいですね……。 ただ、その所為もあるのか分かりませんが、直接私に向かって「パパ」と呼ぶことはまだありません。 (写真を見せて「パパは何処?」と聞くと私を指差すくらいはしてくれますが) 私と嫁さんがいる時に「ママ!ママ!」と呼びながら嫁さんに飛び込んでいくのは分かるのですが、 私しかいない時に「パパ!パパ!」と呼びながら私に飛び込んできてはくれません。 私の場合は「抱っこ!抱っこ!」と言いながらになります。 多分、息子の中で『抱っこ要員』なんでしょうね(笑) ……と、つい先日までは思っていました。 1週間くらい前まで遡りますか、息子の熱が38度台へ急激に上がって保育園から呼び出されました。 小児科に行ったら「風邪」との診断だったので、解熱用の座薬と抗生物質を貰って飲ませたのですが、 薬の力で一時的に36度台まで熱は下がるものの薬が切れるとまた38度台に熱が上がる、その繰り返し。 私も嫁さんも「どうしたんだろう?」と思いましたが、本人は至って元気なので おそらく「幼児熱」の一種でウィルスと戦うために体温を上げているんだろうと様子を見る事に。 ですが、急激に熱が上がって保育園に呼び出されてから4日目の夜、 今まで振り切ることのなかった40度のラインをオーバーしてしまいました。 こうなるともう「幼児熱」とは思えませんので、タクシーを拾って夜間救急の病院へ。 当直の先生に見せたところ、「強いウィルス性の風邪」との診断でした。 ただ、本人もグッタリしているので「点滴」を打つことに。 勿論、息子は初めての点滴。 これまで数々の予防注射は打ってますが、同じ「身体に針を刺す行為」でも点滴は別次元です。 大人だってあんまり楽しいものではありません。 こりゃ大泣きするだろう、そう思いました。 そして、息子の側にいて手を繋いで声を掛けて励ましてあげれば少しは気が紛れるかな、と思いました。 ですが、私と嫁さんは診察室の外……廊下に出されました。 後で知りましたが、幼児に点滴を打つ時は両親にその瞬間を見せないようにする病院が多いそうです。 血管が細く、腕の肉付きが良い幼児は、点滴の針を刺すのが大変であり、 そのうえ泣き叫びながら身体をバタバタさせるので、結果的に何度も何度も針を刺すことになります。 そんな可哀想で残酷なシーンは親に見せたくない……そう配慮してのことだそうで。 案の定、廊下に出た私と嫁さんの耳に息子の泣き叫ぶ声が入ってきました。 そりゃそうですよね……ママとパパが側にいない、代わりに医者と看護師が周りを囲んでいる、 そんな状況だけでも不安なのに、身体を押さえつけられて針を刺される訳ですから。 ただ、息子の「健康」のためには我慢しなければいけません。 可哀相で涙が出そうになりましたが、高熱が続いてずっと苦痛を伴うよりも、 点滴を打つ一時の苦痛を選んだ方が、結果的には楽になるのだから…… 自分達にそう言い聞かせながら息子の泣き叫ぶ声を受け止めました。 でも、前回のコラムで書いたように私は涙腺が弱い人間です。 息子が泣き叫ぶ声を聞いているだけも涙を堪えるのが大変なのに、 「パパ!パパ!」と私に助けを求める声を聞いたら……我慢できる訳ありません。 ママもパパもいる状況なのに、先にパパを呼んだのですよ。 そう、嫁さんよりも先に、私に助けを求めたのです。 多分、周りの大人達を振り払う力を持っているのは父親の方であると子供心に思ったのでしょうね。 ……私は「助けに行けなくてゴメンな」と心の中で謝りながら涙を流しました。 ・ ・ ・ ・ ・ 直接面と向かって呼ばれた訳ではありませんでしたが、 このときに初めて息子から「パパ」と呼ばれたと私は実感しています。 状況が状況だけに、おそらく一生耳に残るでしょうね……泣き叫びながら紡ぎ出された「パパ!」の声は。 まあ、息子には申し訳ないですが、個人的には良かったと思ってます。 自分が頼りにされていることが分かりましたし、 何より息子を愛おしく思う気持ちが更に強まりましたから。 それでも、いつかは、「ととさま」と、呼ばせたい……なぁ…… ・ ・ ・ ・ ・ なお、病気の方は全快しております。 もういつもの「元気過ぎて大変な日々」に戻っております。ご安心ください。 <BGM> くるりくるり(ナナムジカ) [ ユバナ ] |